実装をAIに任せられるようになると、次に任せたくなるのは何でしょうか。
2026年7月上旬に、来栖川電算のある研究開発プロジェクトのメンバーに、AIの使い方について話を聞きました。実装はすでにAI主体で、技術調査にもAIが広く使われています。人の手に残っているのは、仮説を立てて方針を決める部分です。ただ、話の中心になったのは、現状よりもこれから何を変えるかのほうでした。

いちばん広く任せられていたのは、アルゴリズムの実装と、検証や可視化のための書き捨てのスクリプトでした。どちらも、複数のメンバーが挙げていました。
次に多かったのが、論文サーベイと技術調査です。1本の論文をまとめてもらうところから、テーマを横断した調査、最新手法の洗い出しまで、使い方には幅がありました。論文を追いながらアルゴリズムを検証する作業が日常的に発生するプロジェクトなので、調査での活用が目立ったのだと思います。
このほか、テストコードの実装、既存コードの読み解き、アイデアの壁打ち、文章の添削も挙がりました。「実装単体では、もうAIがない状態に戻れない」という回答もありました。
人が担っているのは、仮説と方針と中核の設計
一方で、回答したメンバーの多くが自分の手元に残していたのは、仮説を立てる作業と、方針の決定と、中核の設計です。
理由の1つとして挙がったのは、AIにはできないからではなく、任せるとコストが大幅に増えることが多いからでした。コードやデータを見て仮説や方針を立てる作業は、前提条件を細かく指示しないとうまくいかないそうです。
線引きが分かりやすかったのは、「具体的なイメージが決まっていて、あとは書くだけ」のコードなら、ほぼAIに書かせているという回答です。裏を返せば、そのイメージを作る工程が人の担当範囲だということです。
文章でも、報告書のように内容を詰めるものは自分で書いて添削だけを任せ、簡単なメールはまとめて生成させているメンバーがいました。
研究の進め方そのものを、AI主体で回したい
研究や検討の実行と管理を、AI主体で回せるようにするという課題も挙がりました。プロジェクトとしての取り組みは始まっているものの、まだ実現できていない段階だという説明でした。
その手前にある短期の目標が、AIに仕事を任せられる環境と運用を整えることです。現時点では、条件の指示が足りないと検討の方向が定まりにくいという課題があります。もっと上手な活用方法があるはずだ、という回答もありました。
AIの利用範囲を、個人からチームへ広げたい
中期の目標としては、AIの利用範囲を個人からチームへ広げたいという話が出ました。現在地を「個人」の段階だと整理した回答もあります。個々の生産性は上がったけれど、チームとしての使い方はこれからだ、という見立てです。
具体的に挙がったのは、進捗管理と課題管理でした。会議の記録から課題を起こす、リポジトリの状態から進捗を把握するといった作業は、AI側に寄せられるはずだという指摘です。
別の回答では、自分と別のタスクを並行して任せることはまだできていない、と語られていました。道具として使うのではなく、チームのメンバーのように独立させて使えるようにしたい、ということだと思います。
任せた先で、人にしかできないことを見つけ直したい
長期の話では、任せること自体は目的ではない、という見方が重なっていました。
すべての作業をAIに任せられる状態をスタートラインと置く回答がありました。そのうえで「『AIに任せる』ことは手段であって目的ではない」と続けていました。人がどんな価値を上乗せできるかが問われる、という話です。別の回答では、AIに任せられる範囲が広がるほど、人にしかできない部分を見つけ直す必要がある、という指摘もありました。
AIが作業の中心になり、人は意思決定と説明責任、監査を担うようになるのではないか、という整理も出ています。どれも、任せる範囲が広がることは前提にしたうえで、その先の役割分担を論点にしていました。
レビューと自律的な運用に残る課題
実装を任せる範囲が広がったことで、レビューが追いつかない場面も出てきているという声がありました。生成されたコードを読み切れず、設計の意図をたどれないために手戻りが大きくなる、という話です。
もう1つ挙がったのは、自律的に動かすときのコストです。人が細かく指示しない状態で回すには、費用面の見通しが必要になるという指摘でした。
今後のAI活用で挙がった課題
回答の中では、実装や調査でAIを使う現在地に加えて、研究や検討の実行と管理、進捗管理や課題管理にも活用を広げたいという話が出ました。
一方で、生成されたコードのレビューや、自律的に動かすときのコストは課題として残っています。任せる範囲を広げるために、環境や運用をどう整えるか、人がどこを担うのかも、回答の中で挙がっていました。
