
来栖川電算では、バータイムとして、毎週金曜の夜に飲み物を片手に気になるテーマを持ち寄って話す、社内交流を兼ねた社内LTの場を設けています。2026年6月5日のバータイムでは、「合理的・科学的に楽しいとは何だろう」というテーマで話しました。この記事では、その日に出た意見と、後日社内ブログに投稿された考察を紹介します。
役員が社内報告会で示している所信表明に、合理的にたのしさを追求するという考え方があります。この日は、それを深掘りしてみようという回でした。
進め方は、社内Wikiのページを参加者が同時に編集しながら話す形式でした。「楽しい/楽しくないとはこういうことではないか」「そのためにどうするか」「他に気になること」を各自が書き込み、書き込みが増えるたびに司会がそれを読み上げて、本人に意図を聞きました。
出てきた意見は、大きく2つの方向に分かれていました。
「楽しくない」を減らす方向
1つ目は、楽しくない条件を先に洗い出し、それを1つずつ減らしていく考え方です。
挙がったのは、プロジェクトに参加したときの環境構築が面倒、成果に直結しない作業が多い、やらなければいけないことが残っている、といった例でした。
対応案も同時に書き込まれました。開発環境を一度の実行で用意できるようにする。そもそも構成を単純にする。よく使うものはライブラリやマイクロサービスにして使い回す。それが難しければ、せめてナレッジとして残す。いずれも、気持ちの持ち方ではなく作業の条件を変える案です。
タスクについては、計画を立てて終わらせる、頑張っても終わらない量は引き受けない、無理な依頼は無理と伝えて手放す、という案が出ました。ただし同じ参加者から、これは周囲や仕事との関係に左右されるため、常に自分だけで実現できるものではない、という補足も添えられていました。
一方で、楽しくないを完全になくそうとはしない、という意見もありました。楽しくないことに出会うのは避けられませんし、その落差が楽しさを際立たせる面もあるからです。
「楽しい」を受け取れるようにする方向
2つ目は、楽しさに出会ったときに、それをしっかり受け取れる状態をあらかじめ作っておく考え方です。
挙がった条件は、意義を感じられること、興味を持てること、没頭できることでした。没頭については、得意なことや集中力を発揮できることを選ぶという案とあわせて、没頭しすぎると疲れるという注意も書かれていました。
失敗しても致命的にならない状態を用意する、という意見も出ました。安全のための対策や余裕を設けることで、楽しむ余地を作るという考え方です。これは事故のような物理的な話に限りません。「失敗したら終わりだ」という精神状態で進めるのは楽しさから遠い、という文脈でも語られました。
印象的だったのは、楽しいことをあらかじめ決めておかない、という意見です。何を楽しいと感じるかを自分で決めすぎると、それ以外を楽しむ可能性を狭めてしまいます。楽しさは理性の外で生まれることが多いのではないか、という問いかけでした。数をこなすのではなく、選んだものをしっかり楽しめるように整える、という話も出ました。
個人の合理と会社の合理
対話の後半では、合理性を誰の視点で見るか、という論点が出ました。
例として挙がったのは、自分にしかできない仕事の手法を持っている場合です。その手法を隠しておけば自分の価値は上がるため、個人にとっては合理的に見えます。一方、会社や周囲にとっては非合理になります。手法を公開してできる人を増やすことに会社が報いるなら、個人と会社の合理を一致させられる、という意見でした。
細かく見たときの合理性と、全体で見たときの合理性が食い違う場合もあります。この違いをどう扱うかが、働く場をどう設計するかにつながる、という話でした。
関連して、相手の理を否定しない、という書き込みもありました。合理的であることが必ず楽しいとは限らない一方、自分の理を否定されると楽しくなくなる、という意見です。
バータイムの後に出た整理
後日、所信表明を示した役員が社内ブログを投稿しました。当日の意見をまとめたものではなく、楽しさをどう扱うべきかを本人の視点で整理した文章です。要点は3つありました。
1つ目は、楽しさは直接狙うほど逃げる、という指摘です。そのため、照準を楽しさ自体から外すことが最初の手段だと整理されていました。
2つ目は、状態ではなく活動に投資することです。持ち物や環境が良くなったときの満足には、やがて慣れが生じます。一方で、熟達や人との関係、探究のような活動は慣れに強い、という整理でした。
3つ目は、選ぶ基準を変えることです。「楽しそうか」ではなく「価値があるか、没入できる構造があるか」で選ぶという提案です。難しさの調整にも触れ、自分の能力ぎりぎりに合わせると没頭しやすいと説明されていました。退屈は休む合図ではなく、難しさを上げる合図として読む、と書かれていました。
そのうえで、楽しくないけれど意味のある活動を失敗と見なさない、という点も書かれていました。すべてを楽しさで測る必要はない、という区別です。
理念も、全員で噛み砕く場がある
この回のテーマは、役員が示している所信表明の一節でした。示された言葉のまま置いておくのではなく、全員で書き出して考えてみた時間だったと言えます。
話し始めるとすぐに、精神論ではなく仕事の条件の話になりました。環境構築の手間をどう減らすか。抱える仕事の量をどうするか。失敗できる余地をどう用意するか。個人にとっての合理と、組織にとっての合理をどう合わせるか。
何を楽しいと感じるかは人によって違うため、会社として1つの答えを定める話ではありません。それでも、同じ言葉をそれぞれが自分の仕事に引き寄せて考える機会にはなりました。バータイムでは、技術トピックだけでなく、こうした働き方や価値観のテーマも扱います。
